第10回木山捷平文学賞受賞式が3月8日ギャラクシーホールで行われました。一般部門だけでなく、小中高校生からのたくさんの応募もあり、各部門で市民の活躍のあとが見受けられました。見事小説部門で賞を射止めたのは「本宮鉄工所」を書いた、北海道小樽市出身の真野光一さんでした。受賞の言葉では、「出だしを書き始めて、現代の溶接知識を得るのに職人のいる鉄工所を探し求めた。しかし見つからず、これも運命かとあきらめた時、たまたま出かけた東北震災ボランティアの活動中、和歌山出身で引退した鉄工所主人に巡り合い、再び作品完成の道筋を与えられた」と話され、、まさにもう一つの小説が語られるのを聞いているようでした。とつとつとした語り口は、この方の誠実さ、まじめさと、親近感の持てる人がらをうかがい知ることができましたし、聞いていてとてもさわやかでした。私の楽しみはいつもこの受賞者のご挨拶にあります。その意味でも満足して聞くことができました。もう一つの楽しみは、選者の評を聞くことです。特に今年心に残ったのは、「ストレートに言いあらわすのではなく、表現力で」ということです。「鉄のにおい」という言葉を超えた表現力で鉄のにおいを感じさせる表現力を求めたいと小説の部選評を佐伯一麦(さえきかずみ)氏が述べられ、また他部門の選評の中にも具体的な言葉を通して抽象の世界をいかに表現するかという、課題を指摘されていました。手ごたえのある、貴重な時間を頂き、学ばせて頂きました。